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「恋は思案のほか」 館野とお子

恋は思案のほか 恋は思案のほか

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一人暮らしをするためバイトを探していた持田は、同じ大学の塚原の家に同居し彼を見張るというバイトをすることに。しかし塚原は頻繁に男を連れ込むホモだった! 始めは戸惑っていた持田だが、一緒に暮らすうち徐々に塚原のことを理解し友達として受け入れる。ある夜、塚原の部屋から洩れ聞こえてきた情事とわかる声に反応してしまった持田は…。悩める純情ラブ♥

どこが好きなのかうまく説明できない、と書きましたが、よかったところをちょっとでも言葉にできるように頑張ってみます!

ひょんなことから同居することになった持田と塚原。
二人の間に友情が生まれ、それが少しずつ恋になり、二人がそれを意識するようになっていく過程がとても丁寧に描かれています。

持田はとてもいいやつです。
自然に優しい。まっすぐで人を疑ってかかるようなこともしません。
この面倒見のよさは弟が二人いるからなのかな?
持田は特に目立ったところのない普通のひとなんですが、この「普通」って感じも意外になかなかないですよね。
どっかで特別なところとか、属性が付いてしまうことが多い気がします。
でも持田はとにかく普通。
それが何だか心地よかったし、もしかしてどっかでこういうことあるんじゃないの!と思わせてくれて楽しかったです。

塚原もとても可愛いです。
やりたい放題の俺様なんだけど、それが徐々にやわらかくなっていくのが何ともいい。
優しい表情や持田を思いやった行動が少しずつ出てくるんですよ。
それに気づくと何だかうれしくなります。
それから、自分の中の持田の位置がわからなくなって、それで持田に手を出そうとする妙な鈍感さが可愛かったです。

恋愛経験の乏しい持田はもちろん、ゲイでいろんな男と関係を持ってる様子の塚原も情緒面ではかなり未発達で、自分が何の気なしに口にした言葉で本当の気持ちに気づくくらい鈍いです。
そんな二人の、無意識に口にした言葉、何気ない行動に気持ちが少しずつこぼれていて、こっちがうわ~~!と興奮してしまいます。

持田がようやく自分の気持ちに気づくところが特に好き。
必死さと困惑ぶりがリアルに伝わってきて、じわっと来ました。

あっさりした絵柄に白めの画面、モノローグでの心情描写も決して多くありません。
でもその静かな画面の中で確実に動いているものに、じりじりと目を凝らしていきたくなります。
強く押してくるものがないからこそ、どんどん入り込んでいってしまうのかもしれません。
でも説明不足というわけではなくて、態度や表情で確かに二人の間の空気が変わっていってるということがよく分かるんです。
奥のことを考える持田の顔に甘さがにじんだり、持田を見る奥の表情がどこか優しかったり。
この配分がすごく好き。

そういえば自然に持田は塚原を「奥」って下の名前で呼ぶようになってるんだなあ。
読み返してみると3話から変わってるようですが、そこに何のエピソードも説明もありません。
そういうところも何だか好きだな、「普通」な感じがして。

とにかく館野さんらしい素敵な作品でした。
すごく満たされた!

ところで樋口と筧の関係が気になって気になって!
樋口は女好きみたいだし、友情だよねそうだよねと思いつつ、筧から「お前には俺がおるやん」なんて台詞が出てくると…!
私は関西弁が好きなんだったということを思い出しました。

「君までの距離」
元々大学の同級生で、「なんとなく寝るようになった」斉藤と安田。
斉藤は就職し、安田は院に進んで、それまでの関係ではなくなったんだけど、身体の関係は続いています。だけど進路が別れ、同じ立場ではなくなってしまったことで、二人の間の空気も変わってきている、というお話。

こっちも面白かった!
何の言葉もなしに始まった関係だから、その関係にも名前がなくて、斉藤の立場が一人変わったこともあって、そこから不安も生まれてくる。
この何とも言えない気持ちの揺れの描き方がすごくうまいなあと思います。
こんな状況になったことはないけど、この気持ちはすごくわかる気がしました。

斉藤は先輩とご飯に行った先で、安田が女の子と二人でいるのに出くわします。
その後にモノローグでまるまる埋め尽くされたページがあるんですが、そこで不安って言葉は一つも出てこないのに、不安が堰を切ってあふれ出してるのがよくわかって、何だかすごく胸に響きました。
ここ大好き。
でもたぶん安田も同じような気持ちだったんだろうなあ。

ラストも二人で好きだと言い合うわけでもなく(これから出るんだとは思いますが)、安田が不安を打ち明けただけで、多くの言葉はないんですが、二人の気持ちも関係も確かに変わってるのがわかります。
ここで終わり?って感じがしません。
いいなあこの空気感。うまく言えないのがもどかしいです。

やっぱり館野さん好きだー!
次に新刊が読めるのはいつだろう。
久々に既刊読み返してみようと思います。

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